Pardubice Racecourse 9

 続く第4レース。ちょっとNational Listed祭りもお休みで、”Cena společnosti PARAGAN s.r.o.”という第3カテゴリーのハンデ戦となります。5歳以上の4600メートル。前述の通り基本的にカテゴリー3はハンデキャップ競走となるのですが、特にこのように"hdcp"と表示されているレースはハンデ差を大きく設定しています。トップハンデはStringの71kg、最軽量はSixtysevenの61kg。写真はそのSixtyseven。障害では42戦しているベテランで、今年で10歳。あのSixteenの弟です。偉大な姉の足跡を追いかけてVelká Pardubickáに出走した経歴もあります。ただし、さすがに一線級と戦うとやや厳しいらしく、基本的には4000メートル以上のレースで入着を繰り返しているようで。

 パドックには少しずつ人が増えてきます。最前列はだんだん厳しくなってくるので、スタンドとは反対側にある塚に登って馬を見ることに。同じようなことを考えているらしき人がたくさんいて、塚の斜面にはけっこうな人が座り込んでいます。とりあえず立って見るので邪魔にならないよう、一番上まで登ることにします。この日は晴天のために足元はさほど悪くないですが、雨の後だとちょっと厳しくなるかもしれません。

 レースが始まるのでスタンドに移動していたら、なんと”burčák”(ブルチャーク)の売店を発見。”burčák”とは発酵途中のワインです。晩夏から初秋にかけて出てくるのですが、本格的なシーズンは9月らしく、10月でも売っているのはかなり珍しいようで、街中のワインショップでも全く見つかりませんでした。発酵途中のワインということでかなり管理・輸送や保管が難しいらしく、かつてはワインの産地でしか飲むことができなかったとか。少なくとも、日本ではまず飲むことはできません。500mlで37コルナ(約180円)。赤と白がありますので、両方とも試してみます。どちらも味わいはまるで軽いぶどうジュース! ワインにありがちな苦味もなく、微炭酸で実にフルーティーで爽やかな飲み口。お酒であることを忘れて、すいすいと入ってしまいます。こんな死ぬほど美味い飲み物が、たったの180円で買えるとは。ただし、ご覧の通りの雑な売り方なので、コップに汲んでからしばらくたったものは炭酸が抜けています。買うときには中身をよく見た方がいいかもしれません。とりあえず、スタンドにはちょうど飲み物を置くのに便利な柵もあるので、勝ったburčákのコップを柵に置いてレース観戦とします。

 Bručákを飲んで少しふわふわした頭でレースを見ます。ジュース気分でがぶがぶと飲んだら案外酔いが回ってきます。このレースでは第3カテゴリーとしてはやや珍しく、 Irská lavice(Irish Bank)を使います。写真の通り、普段とは逆方向に越えていきます。誰か落ちてるなぁと思ったら人気の一角のString。騎手は必至で馬の首にしがみつこうとしますが、残念ながらこのまま騎手が滑り落ちる悲しみ。

 レースはJan Faltejsek騎手の騎乗したSaint Josephが勝利しました。なぜか後ろを振り返る写真ばっかり撮れてしまったのですが。Saint Josephは距離を延長してパフォーマンスを上げてきた感があり、来年はさらなる距離延長を試すのかもしれません。Sixtysevenは人気がありませんでしたが、2着まで頑張りました。

 続いて第5レース。順調にパドックも混んできます。”Cena hejtmana Pardubického kraje – Cena Vltavy”というレースで、5歳以上のNational Listed。距離は4500メートルと、4000メートル台のレースとしては最も大きいものとなります。総賞金も40万コルナ(約190万円)とがんばります。いや頑張っているんですよ。写真はKifaaya。2017年にイタリアHurdleとしては最大の競争であるGran Corsa Siepi di Merano (G1)を抜群の瞬発力を繰り出して制した馬です。ただし、その後の成績はどうにもいまいち。Cross Countryは今年の春に第4カテゴリーを一度使ったきりですが、持っている能力でどこまで。

 こちらが人気のEvžen。ニュージーランド産馬So You Thinkの産駒で、この馬自身はイギリス産馬ですね。Cross Countryはここまで5戦4勝。まだ5歳と若い馬です。昨年は4歳馬限定戦である"CENA SPOLEČNÉ STOLETÍ - Cena ČASCH"(National Listed)をぶっちぎって勝ち、世代のトップに立った経歴もあります。上の世代と当たってどこまで。

 こちらが対抗角のAeneas。Galileoの産駒で、アイルランド産馬ですね。2017年のSlovenské derby (G3)の3着馬で、チェコのLysá nad Labem競馬場で勝利し、頭角を現してきました。

 せっかく生産国に言及しているので、もう少し見てみましょう。チェコ障害競馬にはチェコ・スロバキア生産馬はもちろん、ヨーロッパ各国から輸入された馬も存在します。イギリスやアイルランド、フランスに大勢いるような障害競馬のために生産された馬もいますが、平地競争を走っていてもおかしくないような血統の馬もいます。例えばこのレースには、前述のイギリス産馬・アイルランド産馬のほか、ドイツ産馬、フランス産馬、チェコ産馬、さらにポーランド産馬も出走していました。

 例えばDirect Lagrangeはフランス産馬。フランス障害競馬をご存知の方であればお馴染みのAPQSというやつで、フランスPontchateau競馬場にて1勝を上げています。2019年からはスロバキアに移籍。スロバキアŠurany競馬場で、地元の強豪Summer Hillを下すという上々のスロバキアデビュー戦を飾っていました。スロバキアも障害競走を行っている国ですが、さほど国内のレースは多くはなく、強豪は概ねイタリアやチェコに参戦してきます。

 ドイツ産馬Kaiserwalzer。こちらもスロバキア調教馬ですね。今年に入ってからはいまいちの成績で、ここでは最低人気。

 ポーランド産馬Tamas。チェコのみならず、ポーランド、イタリア、スウェーデンに遠征した経験があります。ただ、あまりPardubice競馬場では結果が出ていないらしく、さほど人気はありませんでした。

 レースが始まります。いつもいつも同じスタンドで腰を落ち着けていても芸がないので、たまにはゴール直後の立見席の辺りに居座ってみます。

 馬がこっちに来ます。うーむ高さが足りない。そして馬との距離が異様に近いことを忘れており、直線も当然撮れず。ちなみにこの辺り、けっこう柵の高さがあります。

 勝ったのはEvženでした。Cheltenham競馬場をはじめ、イギリスの競馬場では勝ち馬が最後に帰ってくるのですが、ここでは勝ち馬が先頭に立って帰ってきます。嬉しそうなJaroslav Myška騎手。それにしても立見席は人が多すぎて写真撮るのは無理そうな印象。おそらくどこかの最前列辺りで地蔵にならないと厳しい感があります。


Pardubice Racecourse 8                                Pardubice Racecourse 10